蜂からみた花の世界

蜂からみた花の世界
−四季の蜜源植物とミツバチからの贈り物−
佐々木正己(玉川大学教授)
B5判・上製本・416頁
定価(本体13,000円+税)
ISBN978-4-905930-27-3
2010年7月20日

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 脳細胞100万,体重わずか0.1gのミツバチが,花を求め半径5 kmを飛び回る。仲間を動員する8の字ダンスは有名だが,リクルートすべきか否かは,蜜の「質・量・花までの距離」を総合判断して決めている。茶さじ1杯のレンゲのハチ蜜を貯めるのに,ミツバチは1gの燃料蜜を使って延べ1,000 kmを飛び,訪れる花数は14,000にのぼる。
 こんなミツバチ達の眼に,日本の野や森,花壇や街路樹の花はどう見え,どう評価されているのか? これを680種,1,600枚に及ぶ写真画像とユニークな解説で紹介したのが本書であり,世界でも類例がない。蜜源植物への誘い,ガイドとして役立つよう,「開花カレンダー」,「花粉ダンゴの色データベース」が収録されているのも大きな特徴となっている。
 巻末の解説で著者が提案する「季節や自然を身近に感じられる多様なハチ蜜の楽しみ方」は示唆に富み,世界同時発生しているCCD(蜂群崩壊症候群)問題に照らして読み進むと,ヒトの自然への向き合い方に,ミツバチが警鐘を鳴らしているかのように思えてくる。

撮影裏話(本書のp.385より)
■ お腹の膨らみ具合や花粉ダンゴの大きさを見逃さない
 撮影行のときは,花を見つけると「ハチは来ているかな?」のチェックが癖になっている。とくに撮影チャンスがめったにないような花の場合は,来ているハチは貴重品。そんなときは,お腹の膨らみ具合か,肢の花粉ダンゴの大きさを素早くチェックする。お腹が膨らんでいれば,すでに蜜をいっぱい吸っている証拠で,すぐにも巣に帰ってしまう可能性がある。両肢の花粉ダンゴが大きくなっている場合も同様だ。そうでない場合は,花のほうの状態をチェックする。咲いている花数が少なければ,やはり他の場所に行ってしまいがちだから,チャンスは少ないと心得なければならない。多くても花当たりの訪花滞在時間が1秒以下と短い場合は,今しがた「訪花済み」であることを示す「匂いのマーク」が付けてあるか,もう他のハチたちが蜜を吸い尽くしてしまって蜜がほとんどないことを意味している。そんな場合もじきにハチはいなくなることが予想されるので,チャンスは少ないことになる。猶予はないと心得え,一発勝負の撮影に賭ける。
 一方,ハチの行動を見ていれば,その花への執着度は見てとれるので,それが大きいようであれば,たとえ逃してしまってもまだ希望は残る。一度巣に戻って蜜や花粉を置き,再び同じ所に戻ってくる可能性が高いからだ。巣までの距離は遠くても2〜3km程度なので,秒速7m (時速にして約25km) で飛べば,往復分の時間は長くても10分前後。巣での荷下ろしにかかる時間を入れても,15分以内にまた現れる可能性は十分ある。実際待った甲斐あって,見覚えのあるハチが戻ってきてくれたときは嬉しい。また,帰って行ったハチとは見るからに違うハチが現れたときも,あの戻りバチからダンスで教えてもらった新参者がきたのかと思うと (確かめる術はないのだが),これも嬉しくなってしまう一瞬だ。

目 次
【第1部】 蜜・花粉源植物(写真編)
  680種の蜜・花粉源植物を1,600枚の写真で紹介
  花粉ダンゴの色

【第2部】 解説編
1 日本の蜜源植物の起源と全体像
  (1)外来種への依存度の現状
  (2)どれくらいの種類が蜜・花粉源となっているのか
  (3)蜜・花粉源植物の構成
             
2 蜜源植物の四季
              
3 花側からの受粉作戦とハチ側からの利用戦略
  (1)ポリネーションの基本事項
  (2)双利共生的関係
  (3)ミツバチが片利的に利を得ている場合
  (4)花側が片利的に利を得ている場合
  (5)盗蜜の実態
  (6)風媒花も大いに利用
  (7)農業・食糧生産上のポリネーションの貢献
  (8)生態系維持への貢献
  (9)ミツバチの訪花スペクトルが広い理由
              
4 なぜ行かない花,行かない時があるのか
  (1)周りの花事情により決まる訪花植物
  (2)ミツバチに花蜜の好き嫌いはあるのか
              
5 蜜腺と花蜜
  (1)花蜜はどこから来るのか
  (2)花蜜からハチ蜜ができるまで
  (3)採蜜作業の実際
  (4)移動養蜂
  (5)ハチ蜜はどれくらい採れるものなのか
              
6 ハチ蜜の色と香り
  (1)花の匂いとハチ蜜の香りを比較してみる
  (2)ハチ蜜の色
  (3)ハチ蜜の結晶化
              
7 ミツバチと花粉
  (1)花粉ダンゴの色 — データベース作り
  (2)花粉ダンゴの色の意味
  (3)花粉ダンゴは飛びながら作る
  (4)花粉写真の撮り方
  (5)ハチ蜜中の花粉分析
              
8 ミツバチが訪れる花はどうやって決まるのか
  (1)何処まで飛ぶのか — ミツバチの行動半径は
  (2)どのくらいの数の花を訪れるのか
  (3)何度も同じ花に通える優れた記憶能力
  (4)花の何を覚えるのか
  (5)ランドマークや距離・方角も記憶する
  (6)ダンス言語 — 良いと評価した花へ仲間を誘導するシステム
  (7)評価の三要素は「質・量・距離」
  (8)どうすれば純度の高い「単花ハチ蜜」が採れるのか
              
9 純粋,自然のハチ蜜とは何なのか
              
10 日本在来種とセイヨウミツバチの生活,訪花嗜好性の相違点
  (1)ミツバチの種数が少ない理由
  (2)サバンナのミツバチmelliferaと森のミツバチcerana
  (3)日本に棲息する2種ミツバチの相違点
  (4)ニホンミツバチの訪花嗜好性と日本種ハチ蜜の特徴
              
11 ローヤルゼリーとプロポリスとは
  (1)ローヤルゼリーの実体
  (2)ローヤルゼリー(王乳)ができるまで
  (3)ローヤルゼリー中の「R物質」
  (4)プロポリスとは
  (5)プロポリス源植物と樹脂の採集行動
              
12 English Summary 
  Bee’s Eye View of Flowering Plants: 
   Nectar- and Pollen-source Plants and Related
   Honeybee Products
              
付録1 ミツバチの体のつくりの概説
付録2 ハチ蜜の品質規格 — 国際規格と日本規格
付録3 増殖を推奨したい蜜・花粉源植物リスト
撮影裏話
テクニカルノート
あとがき—ハチ蜜に思うこと
謝 辞
主な参考書
用語索引
和名索引
学名索引
英名索引

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