蜜源植物-2 カタクリ

佐々木正己

 ミツバチは種々の花から蜜を集め,おいしいハチミツを作ってくれます。この連載では,ミツバチの研究者として著名な玉川大学教授佐々木正己さんに「ミツバチとその蜜・花粉源植物」を,写真とともに紹介していただきます。

花に止まって翅を休めるギフチョウ

花に止まって翅を休めるギフチョウ


カタクリ(ユリ科)
 春といえばモモやサクラが代表的ではあるが,カタクリにその到来を感じる人も少なくないようだ。ちょっと紫がかったピンクの花弁が太陽の日差しに敏感に反応して反り返るところや,濃い紫色の雄しべ,それにえもいわれぬ美しい模様の入った葉がまたいい。個体差も大きいが,たいていは葉にも薄く紅が差した模様があって,これと花の調和がまた何ともいえない。

太陽の日差しに敏感に反応して反り返る花弁

太陽の日差しに敏感に反応して反り返る花弁

カタクリの群落

カタクリの群落

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 東京でも戦後しばらくまでは,練馬のあたりの河岸段丘に行けば,イチリンソウやニリンソウ,アマナなどとともに群落になっていて,それは見事であった。いつごろまでかは知らないが,「カタクリ粉」の名が示すとおり,昔は球根から澱粉を取っていたのだから,どこにでもあったのであろう。
 かねがね,このカタクリに訪花し,花の前でホバリングしながら濃い紫色の花粉をダンゴに作っているニホンミツバチの写真を撮りたかったので,今年こそと思い2カ所ほど出かけてみた。花にはちょうどよい時期だったのに,残念ながらミツバチの姿は見られなかった。近くで銀杏を採るためにイチョウを栽培している農家の方が剪定作業をしていたので,伺ってみたところ,今年は日本蜂の巣がクマにやられてしまって,蜂がこないようだとのことであった。
 その代わり幸運なことに1頭のギフチョウが現れ,日向ぼっこをしながら時折花に止まってくれた。ギフチョウは「春の女神」とも称され,ちょうどカタクリの花の時期に羽化するのである。当日はもう昼ころであったので,午前中に蜜をたっぷり吸ってしまったのだろう,カタクリに蜜を求めることはなく,ちょうどよいとばかりに花に止まって翅を休めるのであった。ギフチョウは,40年くらい前には八王子の付近や津久井湖の近くなどにけっこういて,よく会いに行ったものである。でも津久井の辺にはカタクリの花はあまりなかったので,数十年ぶりの再会で,しかも初めてカタクリに来ているところを撮ることができた。ミツバチによる花粉採集行動は見れなかったが,小さなコハナバチの仲間が一生懸命花粉を集めているところは見ることができた。

花粉を集めるコハナバチの仲間

花粉を集めるコハナバチの仲間

 カタクリの開花地域もサクラ前線のより一足先くらいに北上して行くので,秋田や岩手のほうまで足を伸ばせばゴールデンウィークでも間に合うかもしれない。時間が許せばもう一度チャレンジしてみたい。

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